色々な番組でお世話になっている、構成作家のUさんから電話があった。
「だっくす、東京タワーの蝋人形館って行った事ある?」
「はい!ありますよ。大好きで、たまに行きますよ!」
僕の返事を聞いて、Uさんが続けた。
「そうなんだ…あの中にさ…中世の拷問のコーナーがあるだろ…」
「はい…」
「あの中にある、黒いマスクかぶった人達がいるよね。あの人達がさあ…動き出したら怖いよなあ…」
「え??そうですね…怖いですよね…?!」
「…やってくんない…?!」
「は?????」
「蝋人形になってくんないかなあ…」
「蝋人形ですか…」
実はUさんが担当している番組に、J事務所の若手男性アイドルの番組があった。(当時は6人くらいのグループだったような気がする…)その番組の中で肝試しをやりたいと言う事になり、東京タワー蝋人形館の蝋人形が動き出す…と言う企画に決まったそうなのだ。
その蝋人形役?に僕が決定したのである!
もちろん!面白そうなので僕は引き受けた。
収録当日、劇団の仲間4人とともに東京タワーにやって来た…。
閉館後、収録は始まった。
僕達5人は、黒いマスクをかぶり、蝋人形館の中世の拷問コーナーで、アイドル達の到着をひたすら待った…。
館内のクーラーは効いているものの、お客様の通路側ではないので、僕達のいる場所はかなり暑い。
目の部分しか穴が開いていないマスクの中は、汗でかゆくなる…。
顔がかゆい…。
しかし動くわけにはいかないのだ…。
館内の灯りは消えているので真っ暗だ…。
近くには拷問を受け、血だらけになっている蝋人形もある…。
水車の拷問の人形がこっちを見つめている…。
閉館しているので水車は動かず、人形は暗闇からじーっと見つめ続けている…。
待っている僕達もちょっと怖くなってきた…。
そんな時、ようやくカメラのライトの灯りが見え、アイドル達の声が聞こえて来た…。
「お〜!!なんか怖いな…」
「よし来た来た…」
僕がそう思った矢先に…
「あ!テープチェンジです!ちょっとお持ちください!」
スタッフの声が聞こえて来た…。
「オイオイちょっと待ってくれよ〜!こんな近くでテープチェンジなんて…ばれちゃったらどうすんだよ…」
僕達はハラハラして待った…。
テープチェンジは無事終わり撮影は再開された。
アイドル達はどんどん近付いて来た…。
「ちょっとさ〜この人形動いてない…??なんかやばいよ…」
そんな声が聞こえたと同時に、僕達は飛び出した!
「うわ〜!!!」
目をまん丸にして逃げ出すアイドル達!
「わやううう〜!」
と言う、わけのわからない声で追いかけまわす僕達!
僕らが飛び出したと同時に、驚いたディレクターが尻もちをついているのが見える…。
僕達は何方向かに分かれてアイドル達を追う。
僕が追いかけていたアイドルは、そのころから本当に可愛い顔をしていた。
もちろん彼は今でも大スターである。
それにしても彼らのリアクションは素晴らしい。
始めは本当に驚いたとしても、今は盛り上げるために驚いている…はずだ。
でも見事にホントっぽい。
ふと気付くと、僕達はカメラから離れたところまで来てしまっていた。
「カメラもういませんね…。向こう行きましょう!うわ〜!」
と言う声とともに、一番可愛い顔をしたアイドルがまた走り出した…!
彼らはまだ中学生くらい?だと思うが、本当にプロだ…。
無事撮影を終えた僕達はみんなでファミレスにご飯を食べに行った。
ディレクターが言う
「すいません、みんな子供なんでファミレスが大好きで…」
食べ終わると、彼らは本当に礼儀正しく
「ありがとうございました!」
と頭を下げると帰って行った…。
帰りの地下鉄の中、僕がぼーっと突っ立っていると、さっきの一番可愛いアイドル少年がやって来た。
「お疲れさまでした!さっきはありがとうございました!」
「あ、お疲れ様です!地下鉄で帰るんだ…!大丈夫なの?」
ビックリした僕が聞くと
「はい!まだ知られてないですから…」
ニコニコしながらそう言うと、地下鉄の中を軽やかに歩いて行った…。
ちょこっとだっくす